宮崎県西都市には駅がひとつもありません。そんなわけで、公共交通機関での移動はバスしか選択肢がなく、そのバスも1日に数本という有様。
車が一家に一台…ではなく一人一台必要、そんな町です。
でも、そんな西都市にも昔は電車が走っていたことをご存知でしょうか?
今回は、西都市に残る駅跡のうち「妻駅跡」を訪ねた際の記録をしていきます。
日本国有鉄道「妻線」
かつて宮崎県西都市を走っていた路線は日本国有鉄道の「妻線(つません)」といいます。
珍しい名前ですよね、「妻(つま)」って(笑)
この妻線上には「妻駅」という駅がある(あった)んですけど、その住所が「西都市大字妻(さいとし・おおあざ・つま)」なんです。地域名から取られた路線名ってわけです。
そんな妻線は、1914~1984年までの間、西都市と宮崎市を繋いで走っていました。
路線名 | 駅名 | 所在地 |
---|---|---|
日豊本線 | 宮崎駅 | 宮崎市 |
宮崎神宮駅 | ||
日向住吉駅 | ||
佐土原駅 | 宮崎郡佐土原町 (現宮崎市) |
|
妻線 | ||
西佐土原駅 | ||
黒生野駅 | 西都市 | |
妻駅 | ||
穂北駅 | ||
杉安駅 |
参照:https://ja.wikipedia.org/wiki/妻線、黒生野駅跡案内看板
大正3(1914)年6月に宮崎~妻間が開通し、それから昭和59(1984)年11月30日に全線廃止となるまでの約70年間、乗客を貨物を運び続けた妻線。
妻線は沿線地域の発展によく寄与したようで、開通当時は野原にぽつねんと建っていた駅舎周辺に少しずつ街が形成されていきました。
佐土原駅⇔杉安駅、6駅間の距離はわずか19.3kmで、1日6往復の計12本走っていたようです。都会に比べると確実に少ないですが、田舎であれば十分な本数ですね。
しかし、どの家庭でも車を持つ時代が到来し、昭和59(1984)年に廃線の運びとなりました。
線路が敷かれていた場所は、現在ではサイクリングロードとして整備されています。線路の名残を感じられてとても風情があります。
妻駅
路線の名前と同じ「妻駅」が、妻線各駅のなかでも中央駅と言えるでしょう。そんな妻駅は、西都市大字妻にありました。
大正3(1914)年の開通当初から存在していた西都市を代表する駅です。
昭和55(1980)年には、「入妻」と書かれた妻駅への入場券が、新婦への贈り物として全国的に人気となったそうです。
SNSとか無い時代なのでどういう過程で人気になったのか不思議ですが(ニュース番組で報道された?雑誌で紹介された?)、この片田舎の小さな駅の入場券の需要が高まるなんて、地元民としてはなんだか鼻が高いですね。
昭和59(1984)年11月30日の妻線の廃線をもって妻駅も廃駅となりました。最後の日はセレモニーが行われ、大勢の人々が集まったようです。
妻線の当時の貴重な動画を載せていらっしゃる方がいましたのでシェアさせていただきます。
エモい…!
わたしの母親は、妻線が廃線になる前に、記念として先に述べた「入妻」切符を購入しラミネート加工してもらったようなのですが、現在手元にないみたいです。
もう~~~是非とも見つけ出してほしい。見つかり次第写真アップします。
所在地
妻駅跡の所在地はこちらです。↓
日本、〒881-0012 宮崎県西都市小野崎1丁目105
Google Mapに登録されている「旧国鉄妻駅跡」ではなく、上の地図のマークあたり(西都警察署の駐車場辺り)に「妻駅跡」と書かれた記念碑のようなものが建っています。
木製ですっかりボロボロになっており、字はわずかに読み取れます。「旧妻駅跡 廃止 昭和59年11月30日」と書いてあるようです。
駅舎の正確な位置は分からないのですが、わたしにとってはこの木製碑が妻駅跡地としてしっくり来ています。
また、この近くの西都市児童館敷地内に、妻駅を再現した施設が建てられています。
児童館入り口です。ぱっと見、駅そのものですね。
駅看板は児童館敷地内の遊び場に建っていました。
上りは黒生野(くろうの)、下りは穂北(ほきた)。この簡素な印字と、ペンキの剥がれ具合がいい味を出していてグッと来ます。
ここを訪れた際にちょうど児童館の先生とタイミングよくお話ができたのですが、彼女のお話によると、この駅看板は当時から使用していたものであろうということです。
本当は大人の背丈ほどある高さの看板だったそうですが、廃駅になってここに移動されてから地面にどんどん沈み込み、この低さになってしまったそうです。
立派な駅舎ですよね。改札も作ってある凝りようです。日中はここのベンチに腰かけて読書したい気分です。
改札を抜けると西都市児童館の玄関にたどり着きます。
夏休み・春休み等の休暇期間や、平日夕方以降は小学生たちが児童館で遊んでいて少し訪問しづらい(笑)ので、訪れるなら平日午前中や週末がおすすめです。
こういう廃駅跡に限らず大昔の城跡でもそうなのですが、「ここに確かに存在していた」という人々が辿った軌跡を実際に見たりそれに触れたりすると、なんともいえない感動を味わえますよね。
日々のルーチンや仕事では決して得られない、種類もスケールも大幅に違うエモい感情が心になみなみと溢れてくる感じ。(伝わらない)
自分も歴史の途中を生きているんだな、この世に生きてるって素晴らしいって、つくづく感じます。
ドライブがてら、妻駅跡をちらっと見に来ませんか?(*^-^*)
同じ妻線上、黒生野駅跡も訪問してきました。↓

参照:黒生野駅跡 案内看板
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